受験生のみなさんは、今から1週間後、1カ月後、半年後にどれだけ勉強を進められているか、考えたことがありますか?英語長文の理解スピードが今より上がっていたら良いなとか、知っている世界史の知識が今より増えていたら良いなとか、そんな感じでしょうか?
そんなみなさんには、タイムマネジメント術を身に着けてもらえると、受験勉強をより効率的に進められるのではないかと思います。
実は私が家庭教師や予備校のチューターをしていた際に感じたのが、「勉強を進めるにあたってのビジョンが明確になっていない」受験生が多いことです。半年後に自分は模試で何点取りたいのか?そのためにはどれだけの問題量をこなしたいのか?そのためにはこの1カ月で何をするべきなのか?そして今日1日をどのように使えば良いのか?
週末や長期休み前、模試がが終わったタイミングなどで、自分の目標点に到達するために必要なことを、入試本番までにどのようにこなしていくかを見直すことが大切です。
(模試の活用方法については、次の記事も参考にしてください。)
そこで今回は、受験勉強におけるタイムマネジメントについて解説していきたいと思います。
なぜタイムマネジメントが必要なのか?
なぜ私がタイムマネジメント術を受験生に進めるのか、それにはいくつかの理由があります。
モチベーションになる
「今から10カ月後に東大に合格する!」と決めても、「でもあと10カ月もあるし…」って考えてしまいがちですよね。でも「東大に合格するためには今後1カ月このテキストを1日10ページのペースでこなさなければ!」と思うと、「1日であろうと勉強をさぼったら大変なことになりそう!」と感じますよね。このように、やるべきことを可視化することによってモチベーションを向上させることができます。
どうしても受験勉強のモチベーションが上がらないと悩んでいる方はこちら!
自分と向き合える
皆さんご存知の通り、受験勉強は辛いです。どんな良い塾に通って「これとこれとこれ(大量)をやれ」と言われても、自分に「やってやろう」という気持ちが無い限り、途中で挫折してしまうでしょう。
自分の現状を分析し、未来(1か月後、1年後)と向き合うことで、現状の自分に足りない部分が明確になります。このことが「やってやろう」というモチベーションにも繋がります。
自分でしっかりとタイムマネジメントを行っていくためには、未来(1カ月後、1年後)のビジョンから逆算していくマクロ的視点と、現状勉強に使える時間からやるべきことを割り振っていくミクロ的視点の両方が必要です。
マクロ的視点―受験当日までに何をするべきなのか?
マクロ的視点ということで、まずは受験勉強の全体像をざっくりと考えたいと思います。
①受験当日までにやるべきことを考える
受験当日までに終わらせたい問題集、読みたい参考書、復習したい塾のテキスト、記憶したい単語帳、取り組むべき過去問などなど…思いつくものすべてを教科ごとに挙げてみましょう。挙げたものを全部こなせば、志望校に合格できそう!と自信を持って言えるでしょうか。
「そんな、どれだけやっても志望校に合格できる自信がない…」と思う方もいるかもしれませんね。
でも、そこは割り切ってください。まず、どんな難関校を志望していたとしても、受験には基本的に教科書に載っている範囲からしか出題されません。つまり、理論的には受験科目の教科書(とせいぜい問題集各1冊)を完璧にマスターすれば満点がとれることになります。
さらに、受験は満点でなくても合格できます。例えば最難関の東大といっても、約6割の点数さえとれれば合格できるのです。ですから、受験本番で6割(余裕を持っても7割)の点数をとるために最低限これはやるべき!というテキストや参考書をピックアップしてみてください。
自分の今の実力が全く分からない…という方は、実際に過去問を1年分解いてみて、自分のおよその点数と合否のボーダーラインの点数との差を埋めるためには何をするべきか?という視点で考えてみてくださいね。また、受験はもう少し先という高校1、2年生は、まずは今年度が終わるまでに何に取り組むべきかを考えてみると良いでしょう。
東大合格のために必要な目標点などはこちらの記事からどうぞ!
②今後1カ月でするべきことを考えてみる
受験当日までにやるべきことが決まったら、それを1カ月ごとに割り振ります。この時に気を付けることは、A,優先順位をつけること、B,人間は忘れる生き物であると心得ておくこと、C,計画に余裕を持たせておくこと です。
A,優先順位をつける
例えばまだ数学の基礎もできていないのに、「今月から東大入試数学の過去問を解く!」と決めたところで効率が悪いのはお分かりですよね。
また、1科目の中でも問題集・塾のテキスト・模試の復習・過去問などやるべきことが色々あったりするときには同時並行にせず、「まずは塾のテキストの復習を1カ月程度で完璧にする。模試の復習は来月の1週目で集中的に取り組んで、あとの時間は問題集の苦手分野に取り組むことにする」のように決めるとすっきりします。
B,人間は忘れる生き物であると心得る
「8月はこの単語帳にある単語を完璧に覚える」と目標を決めて達成したとしても、2月までその単語帳に触れなければ、もちろんですが内容をほとんど忘れてしまいます。8月に暗記をしたのなら、9月~2月にそれぞれ何回ずつその記憶の定着度を確認するのか決めておきたいところです。
C,計画に余裕を持たせておく
受験直前期になって、それまで思いもしなかった科目に不安が生じたり、取り組みたい問題が増えたり、突然体調不良になってしばらく寝込んだりする可能性もあります。ですから、当然ですが計画には余裕を持たせておくべきです。
③今後1週間のビジョンが可視化される
1カ月ごとにやるべきことを割り振ったのと同様に、それを1週間ごとに割り振り、今後1週間でやるべきことを考えます。予想よりやるべきことが多そうだ、意外に少なそうだなどと分析してみてください。この段階で、次に説明するミクロ的視点と融合させていく必要があります。
ミクロ的視点―今の自分には何ができるのか?
ミクロ的視点ということで、次は細かい部分を詰めていきたいと思います。
①1週間のうち、受験勉強に費やせる時間はどれだけあるかを計算する
高校生の皆さんは学校に通っていると思います。週に何時間か、塾や予備校に通っている方も多いかもしれませんね。さらに毎日の睡眠も大事です。そのなかで、自分が受験勉強に使える時間は1週間に何時間ありますか?
例えば通学で片道30分電車に乗るのであれば、1日あたり1時間は、電車内での暗記物等の勉強に使えると想定できます。学校が終わってから塾に午後4時に着いて、塾の授業が7時から開始されるのであれば、3時間は塾で自習ができます。塾の授業後、夕食ののち家で勉強に取り掛かれるのが夜11時だとすると、夜12時に就寝準備を始める人の場合は1時間、家で自習できることになります。
このように考えると、平日に受験勉強に費やせる時間は、1日あたり多い場合でも5~6時間程度ではないでしょうか。
②1週間の勉強の時間配分を考える
次は、1週間に受験勉強に費やせる時間を、どの科目にどれだけ配分するかを考えます。例えば、平日に5時間、土日に7.5時間自習時間がとれる学生は、一週間に40時間を受験勉強に費やすことができます。科目数の多い文系の東大受験生を想定すると、取り組むべき科目は、英国数と地歴2科目、さらにセンター試験のみで利用する理科1科目の、計6科目です。
ここで、自習時間を単純に科目数で割ると、1科目あたりの1週間の勉強時間が算出できます。この場合は1科目あたり6~7時間ですが、「理科はセンター試験のみでしか使わないから、一週間のうち週末にまとめて2時間だけ勉強しよう」「今週は、苦手な数学は1日2時間程度で週5日の計10時間勉強するようにしよう」などのように、その科目の重要度や1日の予定などに応じて、配分していきます。
このときのポイントはあまり細かく予定を決めすぎないことです。例えば、目安として「数学を1日に2時間」と考えるのは良いですが、問題集の進み具合によっては、「今日は2時間半使ってキリが良いところまで進めよう」「今日は数学のやる気があまり出ないので1時間で切り上げて他の科目をやろう」ということもあります。そのような場合に翌日以降の数学の勉強時間の微調整をできるようにしておくことで、予め決めてあった1週間の時間配分を達成できるようにしておくことが大切です。
センター試験対策についてはこちら!
③その時間で1週間のビジョンをこなせるか?を考える
ここまでで決めた科目ごとの1週間の勉強時間のなかで、マクロ的視点から編み出した1週間のビジョンが達成できるかを考えます。例えば、文系東大数学の過去問を1年分解き、復習するのにかかる時間は約2時間と想定することができます。
このように、1つ1つのやるべきことを実行するのにかかる時間がそれぞれ何時間なのかを計算していくことで、1週間のビジョンを達成するのに必要な時間が可視化されます。
どうしても勉強時間が足りなくなってしまう場合、自分のビジョンが自分のキャパシティをオーバーしてしまっているということになります。受験勉強に使える時間には限りがありますので、もう一度マクロ的視点に戻って、受験当日までにやるべきこと、そして今後1カ月でやるべきことの取捨選択をしてみましょう。
まとめ
このようなタイムマネジメント術によって、自分がいま受験勉強のどの段階にいるのかが可視化され、次の段階を見据えた効率の良い勉強ができるようになります。また、無理な目標を立てることもなくなるので、目標を見失うというリスクも抑えることができます。
そして、このようなタイムマネジメント能力は、受験勉強だけでなく、その先の大学生活や就職活動でも、そして社会人になってからも生かすことができます。加えて、マクロ的、ミクロ的視点で問題を考えることは、日常生活のどのような問題を解決するにあたっても必要な力になってきます。
ただ機械的に与えられた勉強をこなすのではなく、自分がやるべきことをしっかりと分析し、実行する力を、大学受験を通じて身に着けられると良いですね。
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