上の記事を読んでくださる方が多いので、国家総合職の官庁訪問に失敗してこのブログを訪れる方は多いのかもしれません。n年前の自分を思い出しますね(笑)(上の記事に書いた通り、私は国家総合職の官庁訪問に失敗しています。)
さて問題は、国家総合職の官庁訪問で失敗した場合、一刻も早く民間就活をするべきなのか、留年して官庁訪問に再チャレンジするべきなのか、それとも官僚を目指して大学院(公共政策など)に進学すべきなのか、…etc.ということです。
(一次試験、二次試験の段階で国家総合職試験に落ちてしまった、という方にも参考にしていただける内容にはなっていますが、一応、3年間の有効期限がある筆記試験に合格している前提で話します。)
進路の選択というのは、結局は「自分自身が納得できるか」ということにかかっているので、どの選択がベストであるということは、他人である私が明示することはできません。
しかし、失敗体験談を公表する人があまりにも少なく、官庁訪問に失敗した学生が参考にできるようなその後の進路選択についての情報がないために、失敗後の進路選択について悩んだり、その進路選択を悔やんだり、何度も官庁訪問で失敗して時間を浪費する学生はとても多いように感じています。
そこで、今回は、私の周りの官庁訪問失敗経験者(私と同じく全員東大生)のその後の進路選択を見ていて、私が感じたことを話していきます。「東大生は有利」と多くの官庁訪問経験者が口を揃えますが、その東大生でも現実はこんなもんなんだ、と思って読んで見てください。
再チャレンジしても志望省庁から内定をもらえる保証は全くない
官庁訪問に失敗してしまい、今後どうしていけば良いのかわからない、どうしても相談にのってほしい…!!!という後輩がいるのであれば、私は次のようにアドバイスします。「これからは民間就活を軸に考えるようにしてください」、と。
(これを読んでも「どうしても私は官僚一本でいきたいんだ!」と考えるアツい方は、それを否定はしません。自分が納得できるかが最も重要ですから。)
なぜなら、官庁訪問はある意味とても理不尽な戦いであり、再チャレンジしても、内定をもらえる保証は全くないからです。
心情的には大学受験で浪人するのと変わらないかもしれませんが、試験で一定の点数をクリアすれば良い大学入試に対して、官庁訪問はどんな理由で落とされたのかが不明確です。試験の点数(席次)が悪かったのかもしれないし、面接での話し方が悪かったのかもしれないし、その省庁のお偉いさんに嫌われちゃったのかもしれないし、出身高校や学部の先輩の評判が悪かったのかもしれないし、そもそも考え方が官僚と合わなかったのかもしれないし、熱意が強すぎたり有能すぎたりして角が立つと思われただけかもしれません。
(実際、官庁訪問では、「なんであの人が落とされたんだろう」と周りが思うような優秀な不合格者もいますし、その逆パターンも正直な話あります。)
一度目の官庁訪問で失敗しても、それから1年ないし2年間頑張って自分が成長していけば、必ず評価が上がるというわけではないのです。まあ、多くの人はそれでも「自分なら努力して再チャレンジすれば絶対受かる」と思いたいところでしょうが。
例えば、1年目の官庁訪問にて最終面接落ちで補欠の評価を受け、留年した1年間で色々な活動をこなしてきたにも関わらず、2年目の官庁訪問でも最終面接落ち(補欠)になった人を私は知っています。1回目の官庁訪問に失敗したのち、進学して、インターンや国際貢献活動などに従事し、かつ試験にももう一度挑戦して点数(席次)を大幅に上げたけれど、再チャレンジの官庁訪問では1回目よりも早い段階で落とされたという人も複数知っています。
よほど成長できるような環境で1年、2年を過ごしたところで、その成長を再チャレンジの場である官庁訪問の面接だけで伝えるのって実際難しいですし、そもそも官庁の側は成長を求めているわけではないのかもしれないですし。民間就活では、1つの業界のなかで何社も応募できたり、志望業界を変えながら軌道修正できたりするのに対して、官庁訪問は一発勝負なのでコスパも相当悪いですからね。
3年間国家総合職一本で戦ってきて、万全の対策もしてきたのに、3回とも内定をもらうことができなかったという人もいるくらいですから、この国家総合職を中心に考えるのは、リスクが大きいと言えます。
民間就活を基準に考えろ
官庁訪問失敗者には、民間企業等の併願先の内定を持っている学生もいます。そのような学生のなかには、民間企業の内定を辞退し、留年or進学して官庁訪問に再チャレンジをするか迷っている人もいるでしょう。
そのような場合は、その「民間就活自体の結果に満足できているか」を考えるべきです。現時点で満足できている(民間企業の中でも志望順位の高いところに内定した)ならば、その企業に就職することをおすすめします。理由は上に書いた通り、次の年に再チャレンジをしても官僚になれる保証は全くないですし、さらに官僚になれなかった場合、その年の内定先(併願した民間企業等)に満足できるとも限らないからです。
実際に民間企業で働くことになれば、そのなかで生まれてくるやりがいもあるだろうし、働き始めてからどうしても「やっぱり官僚になりたい」と思うのであれば、入社後でも、試験合格から3年間は官庁訪問に挑戦する余地は残されています。
問題は、官庁訪問に失敗した上に、民間企業の内定を持っていないor民間就活に満足していない学生の場合です。
その場合、「秋採用を行っている企業に応募する」「留年して1学年下の学生と同時に就活(と官庁訪問)をする」「大学院等に進学する」といった選択肢で迷う学生が多いと思います。
秋採用でも、魅力的な企業は多く残っています。その中で頑張って内定を獲得することで、それなりに満足できる見込みがありそうであれば、秋採用に応募してみると良いと思います。絶対に留年だけはしたくないんだ!と思っている方にもこれをおすすめします。
ただ、今まで国家総合職を目指してきた人は、民間企業の秋採用に応募しようと思っても、民間就活に気持ちが切り替わらなかったり、業界研究が足りないために、その業界や企業の本当の魅力を全く感じられなかったり、ということがあると思います。そのような人の場合は、仮に秋採用に応募して内定をもらったとしても、その就活に満足できない可能性が高いので、親御さんに頭を下げて、留年か進学かを選ぶことになるでしょう。
留年か進学をする場合には、官庁訪問の再チャレンジをする余地が残されますが、それでもまずは官庁訪問を目標の中心から外すことをおすすめします。というのも、官庁訪問に再チャレンジしようとしなかろうと、その年は絶対に民間就活で内定を獲得し、民間就活を満足した状態で終わらせなければならないからです。さもないと、官庁訪問再チャレンジに失敗した場合に、無駄な一年を過ごしたことになってしまいます。(何回も言いますが、官庁訪問に再チャレンジしても内定をもらえる保証はありません。)
もし、官僚になる目標を捨てきれずにいると、民間就活では「マインド」の切り替えが追い付かず、それを民間企業の面接官に見透かされ、上手くいかない可能性があります。民間企業と官庁とでは、その理念の部分が大きく異なってくるからです。(この「マインド」については後程お話します。)
民間就活で満足のいく内定をもらってから、そこからまた国家公務員になりたいのかをもう一度考え、それでもどうしても国家公務員になりたいと思うのであれば、官庁訪問のための対策を考え始めれば良いのです。筆記試験には一度受かっているわけですから。民間就活よりも官庁訪問のほうが時期が遅いので、民間企業の内定さえ持っていれば、あとは官庁訪問にだけ専念できますから。
本当に官庁にとって必要な人材に成長できていれば、民間就活が終わった時点から官庁訪問対策に専念しても内定をもらえる余地はあると私は思います。(周りの官庁内定者を見る限り、官庁訪問のための準備期間の長さは、結果にほとんど関係ないです。)
留年か進学か
「大学院に進学するか、進学せず単に留年するか」の基準となるのは、「学問を本気で追求したいと思えるか」と、「民間就活に向けて(あえて選ぶとすれば)どちらがステップアップできそうか」です。
時々、東大や京大などの公共政策大学院が官庁訪問において有利だと信じて進学する人が一定数いますが、公共政策大学院に進学して官庁訪問に再チャレンジしても失敗する人は多くいます。個人的には、留年しても、公共政策大学院に進学しても、その他の大学院に進学しても、官庁訪問再チャレンジの内定率はそう大きく変わらない印象を受けます。
その分野の研究職を目指すのであれば、大学院に進学することはおすすめできます。ただ、そうでないのであれば、大学院に進学することによって、(特に文系の場合)民間就活で不利になることは充分に想定できます。つまり、国家総合職に再チャレンジする、しないにかかわらず、文系大学院に進学するのであれば、民間就活で不利になることを覚悟して、必死で民間就活に取り組むべきということです。(もちろん留年も不利になりますけどね。)
それでも、他の人よりも長くなるであろう大学生活を、勉強という学生の本分に費やしたいと考える人には、大学院への進学も良い選択肢となるでしょう。
民間就活で必要なマインド
とりあえず一度は官僚になるという第一目標を捨てろ、とお話しましたが、これは「官僚のマインド」が「民間企業で必要なマインド」と全く方向性が異なってくるからです。
国家総合職の試験に受かるほどの(世間的に見て)比較的優秀な人材にとっては、国家公務員は明らかにコスパの悪い職業です。世の中には、官庁と比べ、圧倒的に条件・給料の良い職場は多くあるわけですから。
そのなかで、給料が低くても社会をより良くしていきたい、国の将来をより良くしていくために尽くしたいという人が官僚を目指すわけで、すぐに成果が見えなくても、何十年先の国の発展のために策を打っていくことが「官僚のマインド」になります。
一方、「民間企業のマインド」とは、短期的に見て収益が出ることを第一に考えるものです。顧客や社会のためにならなかろうが、収益につながるのであればとことんやるのが民間企業です。社員を養っていくためには、会社としては成果を出すまでに何十年と待っている余裕もありません。そんなことしていたら、会社が倒産してしまうかもしれないわけですし。
その点をきちんと認識しておくことが、官僚志望者が民間就活を行う上で必要なことだと思います。私も気持ちの面での切り替えは大変でしたが、何日も何カ月も考え続けて、民間企業での自分の目標も見つけることができました。その話についてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ:官庁訪問は理不尽な世界
国家総合職志望者が官庁訪問に失敗したら、再チャレンジを目指すべきかという点について語ってきました。結論から言うと、再チャレンジするか否かは自分次第です。
ただある意味で、官庁訪問は理不尽な世界です。努力すれば必ず内定がもらえるわけではないのです。試験の席次が良くても落とされる人もいるし、官庁主催の説明会やワークショップにほぼ毎回参加していても、落とされる人はいます(私です)。1回目の官庁訪問で一定の評価をもらえていようがいまいが、再チャレンジしても落とされるときは落とされます。
自分だけは努力すれば受かるとは思ってほしくないです。
だから、将来的にどこかの組織に所属して働くことを考えている(=大学に残らない)場合、官庁訪問に再チャレンジする・しないに関わらず、次に民間就活をする際には決して手を抜かないでください。ただでさえ、本来就職活動に費やすべきこの一年という時間を国家総合職試験に費やしたがために、留年や院進することになり、民間就活では不利な状況になっているのですから。
私がここまで言うのは、官僚になるという目標を捨てきれなかったがために、官庁訪問再チャレンジにも失敗して数回留年し、20代という貴重な時間を無駄にしてしまった学生を複数人見ているからです。そのうちのさらに何人かは「民間就活のマインド」を持てずに、貴重なチャンスを逃したりもしています。
私はそんな後輩を増やしたくはありません。以前は官僚を目指していた身としては、官僚は国を第一に考える素晴らしい職業だと思っていますし、優秀な知人も多く官庁に就職したので彼らを尊敬もしています。でもその選考は厳しいのです。
官庁訪問の厳しさを知っている方たちにこそ、もう一度落ち着いて、将来のあらゆる選択肢を吟味してもらえたらなと思います。
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