合格(うか)るが勝ち

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就活ルールが廃止された場合の影響を、就活解禁時期の変遷も踏まえて考察してみる

 

経団連の会長が2021年春以降に入社する学生の採用活動に関して、面接開始時期などの統一ルールを廃止すべきとの意向を示しています。学業に真面目に取り組むために大学に通っている学生の立場を鑑みれば、また余計なことを…という感じかもしれないですね(笑)

 

就活への個人的な感情はさておき、もし就活ルールが廃止されれば、大学生のスケジュールはどのようになるか気になるところです。

 

そこで、この記事ではまず、採用広報活動解禁時期や面接開始時期などの統一ルールがなぜ設定されてきたのか、そしてこれらのルール(面接開始時期等)が度々変更されてきたのはなぜかを振り返ってみたいと思います。

そこから、就活の統一ルールが廃止されることによる影響を考察してみます。歴史は繰り返しますからね。就活も歴史に学びましょう!

 

大学生の方はこちらの記事もぜひお読みください。

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就活解禁時期の変遷

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「就職協定」廃止と就職活動の早期化

 

1990年代以前には「就職協定」という、大学側と企業側との間の就活時期に関する取り決めなるものがあったのですが、それが1997年に廃止されると、「就職協定」よりも拘束力の弱い「倫理憲章」へと変更されます。

 

これと同時期に、インターネット上に就活情報サイトが登場し、インターネットを通じて情報を得る現代の就活の形が作られていきます。このことと相まって、企業側はインターネットも活用し、優秀な学生と水面下でできるだけ早く接触をはかるようになりました。

また、インターネットを通じて情報収集の幅が広がったり、手軽に企業に応募できるようになったために、学生一人当たりの応募企業数が大幅に増加することになりました。

 

この就活情報サイトのオープン時期が「採用広報活動解禁時期」であり、2012年卒の学生までは、この「採用広報活動解禁時期」が大学3年10月ごろ、「面接開始時期」は大学4年4月となっていました。しかし、優秀な学生を確保するため、その時期も次第に早期化していく傾向が続きます。

 

就活が早期化すると、優秀な学生は早い時期に内々定をもらえるかもしれませんが、内々定をもらえない学生にとっては、就職活動が長期化するだけとなります。1年以上就職活動をしなければならない場合もあるわけです。

そのようなあまりにも長い就活は学業を阻害するという理由で、早期の採用活動が抑制されるよう、採用広報活動や面接の解禁時期を遅らせる統一ルールが生まれてきました。

 

この傾向から、2013~2015卒の学生に対しては、「採用広報活動解禁時期」が大学3年12月に変更となりますが、「面接開始時期」は大学4年4月と変更はありません。

 

就職活動本格化は大学4年次へ、就活前インターンシップの本格化

 

この状況が大きく変わったのが2016卒の学生です。従来の解禁日のルールを持ってしても、学生を早期に獲得したい企業側が早期に採用活動を始める例が相次ぎ、大学生が学業に専念できなくなることへの懸念から、「採用広報活動解禁時期」が大学3年3月に変更、「面接開始時期」は大学4年8月に変更となりました。

また、これによって、海外留学からの帰国者を採用しやすくするという意図もありました。

 

しかし、経団連に属する大企業が8月からの採用活動を行うと、経団連に所属していない中小企業が割を食うことになります。具体的には、従来のように大企業の専攻が終わる時期から中小企業が採用活動を行うと十分な選考期間が確保できないため、中小企業は大企業の選考開始前に内々定を出すことになります。すると、後になって大企業からの内々定をもらった学生からの内々定辞退が多発し、学生を確保できない企業も出てきました。

 

また、結果的に経団連傘下の企業も、3月から説明会等と称して実質的な面接を行っている実態もあったことから、2017年卒以降の就職活動では、「採用広報活動解禁時期」が大学3年3月のまま、「面接開始時期」は大学4年6月へ前倒しとなっています。

(2017年卒の就職活動以降、スケジュールが安定しているようにも見えるかもしれませんが、実際に学生として就職活動に直面していた身の実感として、2019年卒の面接や内々定等のスケジュールは2017年卒よりだいぶ早まっています。)

 

就活解禁が大学4年以降に後ろ倒しする傾向が強まるのに比例して、就活前のインターンシップが、企業と学生との公然の接触の場として重要視されるようになりました。結局、大学3年ごろからプレ就職活動のようなものが始まっていることには変わりないのですね。

 

従来から通年採用を行っている企業もある

 

ただ、経団連に所属していない企業は、この就活ルールに則る必要はありません。外資系企業やベンチャー企業などは、独自のスケジュールで面接、内々定解禁などを行っています。多くの場合、経団連の就活ルールで定められた就活解禁日よりも前に面接等を行い、優秀な学生を確保するケースが多いようです。

 

 

就活ルール廃止の影響を考える

 

さて、ここからは「就活ルールが廃止されたらどのような影響があるか?」を考えていきたいと思います。

 

就職情報サイトにとっては市場拡大

 

まず考えたいのは、就職情報サイトの動きです。(なにせ就活と就活情報サイトは切っても切れない関係にあります。)

就活ルールが廃止されれば、今までは大学4年生(インターンシップを含めても大学3年の夏以降)のみだった市場が、一気に大学生全体へと広がります。就活情報サイトとしては、この市場が拡大する絶好のチャンスを逃すわけにはいきません。「就活はいかに早く行動するかが大事!」などといった謳い文句で、大学入学直後の1年生をあおっていくでしょう。

 

その結果、企業も大学1年、2年向けのインターンシップを開催していくことになるはずです。今までの傾向から言っても、企業側は、早期に優秀な学生と接触できるチャンスを逃したくないはずですから。

 

ただ、経団連傘下の企業の面接、内々定解禁時期は、そう急激には前倒ししないはずです。(1、2年次で内定が出ることは少ないであろうという意味です。)

どの企業も内々定辞退者を増やすことは採用コストのロスに繋がりますので、競合他社の様子を伺いながら、足並みをそろえていくはずです。

 

実質的な内々定解禁が最も早かった時代が、2010年ごろで大学3年の秋から冬前後ですから、就活ルールの廃止によって、最終的には、そのくらいまでは就活スケジュールが前倒しされる可能性は十分に考えられると個人的には思います。

また、大手企業よりも早く人材を確保したい外資系企業やベンチャー企業は、さらにそれより早くに内々定を解禁することになるかもしれません。

 

(外資系コンサル志望の方はこちらの記事も参考にしてみてください!)

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就活の超長期化と就活負担の増加の懸念

 

就活市場が拡大することを考えると、大学生は、入学直後から大学3年いっぱい、人によっては大学4年までずっと、就職活動を念頭にいれて活動していくことが必要になります。大学生は、入学直後から企業の説明会をまわり、長期休みのたびに企業のインターンシップに参加することが求められるになるかもしれません。

 

その結果、一人あたりのインターンシップ参加数は当然増えますし、その応募や選考、準備等に充てる時間も当然長くなります。

 

また、インターンシップ等を通じて、早期段階で優秀だと見込まれた学生は、そのような優秀層限定の説明会やイベント等へ招待されたりするなど、いわゆる「囲い込み」を受ける可能性が高くなります。内々定の可能性を排除したくなければ、それらの「囲い込み」に何度も参加しなければならないなど、一社あたりの負担も増えるかもしれません。

 

加えて、就活が早期化すると、志望業界の面接の前に、他の業界に応募して面接の練習等を行い、早期に内々定をいくつか確保しておく学生も多く現れるでしょう。また従来は、大手企業の専攻が3カ月ほどの期間に集中していましたが、各社の採用時期がずれれば、長期プランでもっと多くの企業の面接を受けることも可能になります。その結果として、一人の学生が「多くの企業に応募し、多くの内々定を確保する」という状態になることも予想されます。

 

就活ルールの変更に際し「就活が学業を阻害する」ことが散々言われてきた通り、ルールがなくなれば、就活が大学生活の大部分を占めるようになってしまうかもしれません。

 

「大学生なんて勉強しないんだから就活に専念させろ」と言う人が考えていないこと

 

「大学生なんてどうせ遊んでばかりなんだから、低学年のうちから就職活動させたほうが良い」「大学の勉強なんて無駄だから就活に専念しろ」などという論調を良く聞きますね。

 

たしかに日本の企業は「大学で何をどれだけ熱心に学んできたか」という点はほとんど評価しません。大学での成績が採用に関わることもほとんどありません。だから大学生は学業に専念しなくても良いと考えます。授業に出席するよりインターンに参加していたほうが、後々有利になる可能性が高いからです。

 

ただ、考えてもみてください。大学の研究や授業には、多額の費用がかかるのです。もし、その全額を、大学生の保護者(もしくは大学生自身)が払っているのであれば、その大学生の期間をどのように過ごそうが本人の自由だとは思います。

しかし、日本の大学には、多額の税金が投入されています(もちろん私立大学もそうです)。大学での勉強が企業で働く上で不要なのであれば、大学(と大学生)の数を大幅に減らして、高卒での採用を大幅に増やせば、こんな税金の無駄遣いは減るじゃないですか。

もし、「企業は受験勉強の成果(出身大学名、入試難易度)も評価に入れている」というのであれば、高卒の学生に入社試験(学力試験)を課すだけで充分じゃないですか。もしくはセンター試験を必修にして、それを高卒者の採用評価の一環として取り入れれば良いのではないでしょうか。

 

それでも、大学生の教育のために国民の税金が多額に投入されている現状がある以上、(しかもその大学には選抜された人しか通えないわけだから、)それを無駄にしないように、学業面で精一杯努力するのが学生の本分だと思います。(特に多くの税金が投入されている東大に通っているとそう思います。もっとも、東大生でも大学の授業に専念せず、課外活動やインターンに精を出している学生も多いですが。)

 

大学生が学業に専念しないのであれば、「大学生が真面目に学業に取り組むための方策を考えよう」というのが筋であり、(もしくは大学での勉強自体が企業で働くうえで不要なのであれば「高卒での採用を増やそう」とか「大学の授業の在り方を変えよう」と考えるべきであり)、「大学生は勉強しないから就活させよう」というのはちゃんちゃらおかしな議論だというわけです。

 

(ちなみに海外では、大学での成績や教授からの評価も企業からの選考基準の大きな割合を占めるので、学生も熱心に勉強しますよ。ある程度の強制力がないと学生が勉強しないという点は、どこの国でも同じなのです。)

 

企業は学生の本当の姿を見ているのか?

 

 

そもそも、学生を採用する側である企業は、学生の「就職活動に対する意欲」とは別の、本当の姿を判断できているのでしょうか。

 

「就職活動があるから」という言葉を免罪符にして、大学の授業で行われるグループ発表のための話し合いを毎回のようにドタキャンし、結局発表当日まで現れない人も複数人みてきています。

 

アルバイト先の予備校でも、就職活動期間中は忙しくてアルバイトに入る時間がないというのはまだわかります。しかし、定期的に面談すべき生徒をほったらかしにして数カ月間も休み、その間に代わりにその生徒の面談を行おうとした他の大学生アルバイトの業務連絡すら無視し続けるというのは許されるのでしょうか。

 

授業でもサークルでもアルバイトでも、ちょっとやりたくない仕事があるだけで「就職活動が大変で…」と言い訳するのに、いざ就活の面接になると「バイトリーダーとして他のアルバイトをまとめてきました」「サークルの運営に関わりました」とアピールして、企業側もそれを信じていて、この社会では就職活動だけうまくやればそれで良いのでしょうか。

(私は当時は民間就職志望ではなかったので、そんな知人が次々と内定をもらっていくのを見て、実は内心かなり呆れていました。)

 

「通年採用が時代に合っている」という意見に対して思うこと

 

「近年は学生も多様化しているから、通年採用の方が時代に合っている」「国際化の波にのって、日本企業も通年採用を取り入れるべきだ」と言う人がいます。たしかに、近年では海外留学をする人も多いですし、地方活性化ボランティアなどで主体的に留年を選ぶ人もいます。

 

ただ、ほとんどの生徒は、大学に4年間在籍して、3月に卒業し、翌月の4月から一斉に入社するわけです。例えば大学卒業後になって就職活動やボランティア活動をしたところで、「なぜこの時期に?」と言われるだけで、就活市場では見向きもされません。秋入社でさえほとんどありません。これは就活ルールが変わろうが、動きようのない事実だと思います。

 

しかし海外で行われているような「通年採用」とは、本来、卒業後にそのような特殊な経験を積んでいる人を、積極的に評価して採用する制度なのです。

 

就活ルールを廃止することによって生まれる「通年採用」という仕組みが、大学1年次からの「就活」というレールに乗り損ねた人、乗らない選択をしてきた人を排除するような仕組みであるならば、「多様性のある人材の採用」とは真逆の方向に進んでいることを認識するべきだと思います。

 

大学生活と就職との接続

 

就活制度の是非について議論すると、「自分は就活のせいで学業との両立に苦労したから、就活の長期化には反対」「自分は早期からインターンに参加して内定を掴みとったんだから、同様に内定がほしければ大学入学直後から努力すべき」「就活制度が変わろうが、今は好景気だし、今の就活生は恵まれている」など、自らの経験に基づいた好き嫌いの議論になってしまいがちだと思います。

ですが、就活が大学在学中に行われる限り、そして就活において学業成績が考慮されない限り、就活が大学の学業を阻害しているという事実には変わりないと思います。

 

そして、なぜそのような事態が生じているかと考えてみると、大学での勉強が、企業で働く上で全く必要とされていない現状があるからではないかと思います。つまり、社会人になる入り口である就職活動と、学生生活の出口である大学生活が全く接続されていない。はまらないパズルのピースのように、どうもしっくりこないと感じる要因だと思うのです。

 

それでも、このピースが上手くはまらないなかで、企業側は就活ルールを通じて、就職活動と大学生活の時期的な線引きを行うよう、努力はしてきました(結果はともかく)。しかし、もし就活ルールを廃止することになれば、この線引きさえも放棄することになるとも言えます。

線引きが放棄され、はまらないピースが顕在化する前に、企業側も大学側も、このパズルのピースがはまるように、行動を起こしていくべきだと思います。

 

特に教育行政側(文科省)は、やみくもに経団連に反発するだけでなく、大学制度の意義と存在自体を見直し、パズルのピースを再構築する段階にきているのではないでしょうか。

 

おわりに

 

 

以上、またまた好き勝手に考察して語ってみました(このブログでは、世の中の色々について度々考察しています)。就活ルールの廃止が実現されるか否かはさておき、大学生活と就職との接続については、なるべく早い段階で取り組んでいくべき課題ではないかと個人的には思います。

ほかの考察も読んで見たいという方は、以下の記事もどうぞ。

www.asuka-ukaru.com 

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